最終更新日 2024年9月15日 by iryou
目次
◇石油とは?長岡石油さんが解説
石油はある特定の地域で多く産出されるエネルギー資源で、主成分である炭化水素と少量の硫黄化合物から成る液状の物質(油)です。
油井で産出されて水・ガス・医師などの不純物を取り除いて得られる油は原油と呼ばれ、粘性が非常に高くて黒いゼリー状の塊に見えます。
石油の主成分である炭化水素には炭素原子が紐のように伸びた直鎖状のものと、輪のように環状に繋がった分子があります。
炭素原子の長さが短い方が揮発性が高く(沸点が低い)、爆発の危険が高いです。
炭素原子の数が多いとゼリー状またはロウ状に固まりやすく、沸点が高くて揮発しにくくなります。
原油の中には炭素の数が少なくて揮発性が非常に高い石油ガス(LPG)から潤滑オイルやアスファルトなどに使用される残油にいたるまで、さまざまな種類の成分が混ざっています。
そのままでは燃料として使用できないため、産出された油は蒸留や触媒で改質などの精製・加工が行われて成分ごとに分けられてから出荷されます。
日本国内では原油の産出量が非常に少ないため、大部分を中東の産油国から輸入しています。
中東から運ばれた原油は、日本国内にある数箇所のプラントで精製されてから製品に加工されます。
◇加熱して蒸発させることで沸点が低い成分から順番に取り出す
原油を精製する際は、加熱して蒸発させることで沸点が低い成分から順番に取り出します。
沸点が一番低い成分は石油ガスで、日本国内ではタクシーの燃料や都市ガスが整備されていない地域の燃料(プロパンガス)などに使用されます。
次に沸点が低いのはナフサで、これはプラスチックなどの合成樹脂の原料です。
ナフサよりも揮発性が低い成分から、ガソリン・灯油(旅客機用のジェット燃料)・軽油・重油などの燃料が製造されます。
これらの成分を取り出す際は、触媒を用いて水素を取り出す必要があります。
原油を精製する過程では水素ガスが副産物として生成されるため、化学工業や燃料電池自動車などに活用されています。
燃料油の精製過程で有害物質のベンゼンが除去されますが、これも各種化学製品の原料として使用されます。
最後は揮発性が低い油が蒸発せずに残り、これらは潤滑油・アスファルト・パラフィンの原料です。
◇日本国内ではナフサとガソリンの需要が非常に大きい
原油は天然物なので、原産地ごとに含まれる成分の割合に違いがあります。
このため製油所で蒸留を行う際は加熱する温度を細かく制御することで、最も効率が良くなるように蒸留が行われます。
基本的に原油から取り出すことができる成分の割合は決まっていますが、日本国内ではナフサとガソリンの需要が非常に大きいという特徴があります。
原油を蒸留して得られるガソリンやナフサだけでは国内で必要とされる量を賄うことができないため、炭素原子が長くて揮発性が低い成分(重油など)を化学変化させることでナフサやガソリンを合成しています。
逆にガソリンやナフサ以外の製品は過剰気味で値段が安く、国内で消費し切れない分は海外に輸出されます。
原油には硫黄分が含まれているので、そのまま燃料として使用すると排気ガスに含まれる硫黄酸化物が酸性雨や土壌汚染の原因になってしまいます。
このため、日本国内の石油元売り会社では硫黄分を除去する脱硫技術を開発してきました。
日本の会社が持つ硫黄除去技術は非常に高く、残留している硫黄分の少ない良質な燃料油は海外に高値で輸出されています。
◇石炭を液化するためのコストは1バレルあたり45ドル程度
ガソリンや軽油などの燃料は、他の鉱物から合成をすることが可能です。
現在では天然ガスからもガソリンが合成されて使用されていますし、石炭を液化してガソリンや灯油などの燃料油を合成している国や地域もあります。
石炭や天然ガス自体は安価ですが、化学的に燃料油を合成するためには加工のために余分のコストがかかります。
ちなみに石炭を液化するためのコストは1バレルあたり45ドル程度で、もしも原油価格がこれよりも高騰すれば石炭を液化しても採算が取れるようになります。
このような事情があるため、それまで産油国は原油価格を1バレルあたり45ドル付近かそれ以下になるように設定してきました。
一般的に石炭は木が変化してできた化石で、石油は太古の昔に生息していた海中の微生物が化学変化した化石であると考えられています。
ところが最近は、原油は微生物の死骸以外の材料で出来たという説を提唱する学者がいます。
◇石油は実際に無尽蔵に得られるという訳ではない
地球の内部には惑星由来の炭素が豊富に含まれていて、高温高圧の地下で水と反応して炭化水素が合成されたという説が存在します。
その証拠として既に枯渇した油田から再び産出されたり、生物の化石が存在しない大深度の地下に存在する油田があります。
太古の昔の生物ではなくて地球の内部に含まれる炭素や水から原油が合成されたと仮定すると、地球には従来に考えられていたよりも遥かに多くの原油が存在していることになります。
油田によっては採掘コストが高いので、実際に無尽蔵に得られるという訳ではありません。
それでも採掘技術が開発されたり新たな油田が発見されることで、今後も原油は枯渇せずに人類が利用し続けることができると考える専門家は少なくありません。